こんにちは。kzです。

今まで数学に触れつつ機械学習を中心に書いてきましたが、おそらく読者さんは数学科の方ではないと思うのでアルゴリズムの記事をみて、数学書を読もうとした方が本を買ってから後悔しないように、大学一年で習う集合論というものを簡単にまとめてみました。なのでこれは素人の方が数学書の初戦でボコボコにされないための踏み台のような扱いになればいいかな、と思っています。なお、この内容は大学の数学科1年生が習うものになります。

集合

数学で考える対象のはっきりとした集まりのことを集合といいます。

ある集合Aに属する対象aをその集合の元または要素といい、a\in AまたはA\ni aと書きます。

有限個の元からなる集合を有限集合と呼び、無限個の元からなる集合を無限集合と呼びます。

An個の元からなる有限集合のとき、|A|=nと書く.便宜上、元を1つも持たない集合を考え、この集合を空集合と呼び、\emptysetと書きます。

集合を表す場合、{a,b,c,…}のように属する元を並べて書きます。

自然数全体の集合などに以下の記号を用います。

  • \mathbf{N} 自然数全体の集合
  • \mathbf{Z} 整数全体の集合
  • \mathbf{Q} 有理数全体の集合
  • \mathbf{R} 実数全体の集合
  • \mathbf{C} 複素数全体の集合
A,Bを集合とする.Aの元がすべてBの元であるとき、ABの部分集合であるといい、A\subset BまたはB\supset Aと書きます。

A \subset BかつB\subset Aのとき、A=Bと書きます。

A\subset BかつA\neq Bであるとき、ABの真部分集合といいます。

空集合は任意の集合の部分集合であると定義します。

A,Bの少なくとも一方に属する元全体からなる集合をA,Bの和集合といい、A\cup Bと書きます。

A,Bのどちらにも属する元全体からなる集合をA,Bの共通部分といい、A\cap Bと書きます。

Aには属するがBには属さない元全体からなる集合をAからBを引いた差集合といい、A-BまたはA\backslash Bと書きます。

集合Xの部分集合Aに対して差集合X-AA^cと書き、Xに関するAの補集合と呼びます。

Aの部分集合全体からなる集合をAのべき集合といい、2^Aと書きます。

有限個の集合A_{1},A_{2},…,A_{n}の直積をA_{1}\times A_{2}\times\cdot\cdot\cdot\times A_{n}={(a_1,a_2,…,a_n) | a_i\in A_i\ (i=1,…,n)}により定義します。ここで(a_1,a_2,…,a_n)は各i=1,…,nに対してA_iの元a_iを順序付けて並べたものです。

ここまでは高校数学でも経験があると思うので直積を除いて簡単ですね。直積は書き方が独特ですが、ただの写像です。簡単にいうと、「二倍する」という写像は引数をひとつ取り出力をひとつ返します。一方で「掛け算」という写像は二つの引数に対しひとつの出力を返します。このようにいくつかの引数を考えるときに直積を使います。

写像

集合Aの任意の元aに対して集合Bのある元f(a)を対応させる規則fのことをAからBへの写像といい、f:A\rightarrow Bと書きます。また、A\ni a\mapsto f(a)\in Bと書くこともあります。

Afの定義域,Bfの値域と言います。2つの写像f:A\rightarrow B, g:A\rightarrow Bに対してf(a)=g(a)\ \ (\forall a\in A)が成り立つとき、f=gと書きます。

A_{1}\subset A, B_{1}\subset Bとするとき、f(A_{1})={f(a)\ | a\in A_{1}}fによるA_{1}の像,f^{-1}(B_{1})={a\in A | f(a)\in B_{1}}fによるB_{1}の逆像と言います。特に、f(A)fの像といい、Imfとも書きます。

f:A\rightarrow BA_{1}\subset Aに対して写像f\vert_{A_{1}}:A_{1}\rightarrow Bf\vert_{A_{1}}(a)=f(a)\ \ (\forall a\in A_{1})と定義し、fA_{1}への制限と呼びます。

また、A\subset Xとなるような集合Xに対して写像\widetilde{f}:X\rightarrow B\widetilde{f}(a)=f(a) (\forall a\in A)となるものはfXへの拡張と呼ばれます。

2つの写像f:A\rightarrow B, g:B\rightarrow Cに対して写像g\circ f:A\rightarrow Cg\circ f(a)=g(f(a))\ \ (\forall a\in A)と定義し、fgの合成と呼びます。

「写像」という言葉が出てきましたがただの「関数」だと思ってもらって構いません。人によっては「作用素」と言う人もいます。「\forall」と言う記号については「for all」と読み、「任意の」と言う意味です。「\exists」は「exist」と読み「存在する」と言う意味です。

Proposition

  • 3つの写像f:A\rightarrow B,  g:B\rightarrow C,  h:C\rightarrow Dに対して等式h\circ(g\circ f)=(h\circ g)\circ fが成り立つ.

Definition

A,Bを集合とし、f:A\rightarrow Bを写像とします。
  • \forall a_{1},a_{2}\in A\ \ s.t.\ \ f(a_{1})=f(a_{2})\Rightarrow a_{1}=a_{2}が成り立つときfは単射であるという
  • \forall b\in B,\exists a\in A\ \ s.t.\ \ f(a)=bが成り立つときfは全射であるという
  • fが単射かつ全射であるとき、fは全単射であるという
集合AからAへの写像fで任意のa\in Aに対してf(a)=aと定義したものをAの恒等写像といい、id_{A}と書きます。

写像f:A\rightarrow Bに対してある写像g:B\rightarrow Aが存在してg\circ f= id_{A},f\circ g= id_{B}が成り立つとき、gfの逆写像といい、g=f^{-1}と書きます。

「逆写像」とよく間違えられるもので「逆像」と言うものがあります。また、「恒等写像」が出てきましたがこちらは有名なResnetのアルゴリズムで登場します。

Proposition

  • f:A\rightarrow Bが逆写像を持つこととfが全単射であることは同値である

関係

A\times Aの部分集合RAにおける関係といいます

Definition

Aにおける関係Rは次の3条件を満たすとき、同値関係という。ただしx\sim y(x,y)\in Rを表す。
  • 任意のx\in Aに対してx\sim x (反射律)
  • x\sim yとなる任意のx,y\in Aに対してy\sim x (対称律)
  • x\sim y,  y\sim zとなる任意のx,y,z\in Aに対してx\sim z (推移律)
\simA上の同値関係とするとき、C(x)={y | y\sim x}x\in Aの同値類といい、A/ \sim ={C(x) | x\in A}A\simによる商または商集合といいます。

x\in Aに対してC(x)\in A/\simを対応させる写像をAからA/\simへの自然な写像といいます。

A/\simの元Cに対してx\in CとなるAの元をCの代表元といい、Aの部分集合RA/\simの各元(つまり同値類)の代表元をちょうど1つずつ含むとき、Rを完全代表系といいます。

「同値類」、「商集合」は初見で理解するのは難しいものだと思います。僕のイメージとしてはとある集合に対して「グルーピング」の動作を考えます。ここでグルーピングされてできた新たな集合を商集合、各グループを同値類、グルーピング方法を同値関係と言います。簡単な例は割り算のあまりです。

Definition

Aにおける関係Rは次の3条件を満たすとき、順序関係といいます。ただしx\leq y(x,y)\in Rを表します。
  • 任意のx\in Aに対してx\leq x (反射律)
  • x\leq y,\ !y\leq xとなる任意のx,y\in Aに対してx=y (反対称律)
  • x\leq y,\ !y\leq zとなる任意のx,y,z\in Aに対してx\leq z (推移律)
順序\leqの与えられた集合を順序集合といいます。

順序集合Aの任意の2元x,yに対してx\leq yまたはy\leq xのいずれかが成り立つとき、Aを全順序集合といいます。

A_1を順序集合Aの部分集合とするとき、Aの順序関係をA_1\times A_1に制限すればA_1もまた順序集合となります。

このとき、A_1Aの部分順序集合という。順序集合Aの部分順序集合A_{1}が上界を持つとは、あるa\in Aが存在して、任意のx\in A_1に対してx\leq aとなる場合をいいます。

任意の全順序部分集合が上界を持つような順序集合を帰納的順序集合といいます。また、a\in Aは任意のx\in Aに対してa\leq xならa=xとなるとき、Aの極大元といいます。

順序集合に関しては記号のせいか混乱する友人が多いです。あくまでただの記号なので大小を図る記号の存在は一旦忘れてください。

多様体シリーズとかも欲しいですか?でわ。